追及すると奥が深かったA判とB判それぞれの馴れ初め

A版のB版のAとかBとか何だろうと疑問に思ったことはないですか?
学生時代なら、大学ノートはA4サイズだし(たまにB5)、コピー用紙も大体A4サイズ、そしてたまにB5という小さいサイズのコピー用紙があって、大きさが違うので扱いにくいなぁ等思ったりで、今思うと当時は世の中にはサイズについてはA4とB5がほぼ全てで、たまにA3とかB4というお父さんとお母さん的な用紙も存在する・・・。くらいに思ってました。

しかし社会人になるにつてだんだん用紙のサイズっていっぱいあるんだ。と言うことに気づかされます。最大の規格サイズはB0サイズ(1030mm×1456mm)その次はA0サイズ(841mm×1189mm)その次はB0サイズの半分の大きさでB1サイズ(728mm×1030mm)、A1サイズ(594mm×841mm)・・・と数字が増える度に半分のサイズになっていきます。

そして「そういえば……規格サイズっていつからあるんだろう……?」「なぜわざわざA判とB判が存在するんだろう」と疑問に感じるようになりました。

気になって調べてみると、生活に溶け込んでいる物事の歴史ってやっぱり奥深いもので、A判はドイツから歴史が始まっていたり、日本で使われているB判は実は世界で使われているISO216の規格のB判(Bシリーズ)とは別物だったりと、なかなか面白い情報がたくさん出てきました。

ということで今回は、調べてわかったA判B判の歴史に加え、規格サイズの豆知識も併せてご紹介していきます!

ちょっとマニアックな記事になりましたが、是非最後まで読んでください。

A判の由来

始まりはドイツ人? 科学者オストヴァルトの閃き

もともとはA判の提案者と言われているドイツの科学者、ヴィルヘルム・オストヴァルトが1911年に提案した「1cm×√2cm(1:√2)を基本としこれを倍々にしていく紙の寸法」がA判の始まりです。

この寸法は長辺を二等分にしても1:√2の比率が変わらないという特徴を持っており、書籍の製本等に使われていましたが、やがて新たなる規格に取って代わられることになります。

ヴィルヘルム・オストヴァルトの肖像画(Wikipediaより)

オストヴァルトの助手 ポルストマンと「DIN476」

A判の提案者と言われているオストヴァルトにはウォルター・ポルストマンという助手がいました。
彼は1912~1914までオストヴァルトの助手として働き、1915からは戦争に徴兵されたり、博士号を取得したりと紆余曲折あった後、1920年にドイツ工業標準化委員会(現在のドイツ規格協会)の従業員になります。

そして1922年、ポルストマンはオストヴァルトの提案した寸法を基に「DIN476」という規格を作成。これは紙を対象とした841mm×1189mm(A0)を基本とするA判規格のことで、この規格は時を経て今日でも世界中で使われる国際規格となります。

世界へ羽ばたいたオストヴァルトの閃き 国際規格「ISO216」に

時は巡って1947年、スイスで「ISO(国際標準化機構)」が設立されます。
これは、国際的な取引を円滑にするために「モノやサービスの基準を世界中で同じレベルにしよう」と設立された機構で、身近なところではネジやクレジットカードのサイズ等がISO規格として国際的に統一化されています。

そんなISOでは1975年に紙に関する規格を規定しました。その名も「ISO216」

ISO216とは

ISO216はA判とB判の紙を定義した規格で、これはドイツの工業規格であるDIN476を基にした規格で、用紙サイズの国際規格。
北米とラテンアメリカの一部を除く世界中で使用されています。

こうしてオストヴァルトの提案した寸法は今や私たちが日常で目にするA判として国際規格となったのです!
ただし、実は日本のB判はISO216ではないんです……詳しくは次の項へ!

B判の由来

岐阜から始まるB判の軌跡 最古の和紙「美濃紙」とは

B判の始まりは美濃紙(美濃和紙)にあると言われています。
美濃紙とは、美濃国(現在の岐阜県南部)で作られていた紙の総称で、美濃国は最も古くからの和紙の名産地とされており大宝時代の「正倉院文書」の戸籍謄本は、現存する中で最古の和紙とされています。

しかし、この時代の紙の大きさは作り手により様々で決まった規格があるわけではありませんでした……。

江戸の町にあふれる規格「美濃判」=B判?

大宝時代から約9世紀後の江戸時代。この時代になると、徐々に美濃紙の大きさが統一されていきます。

この頃、美濃紙はその質の良さから幕府御用達の和紙として広まり、町人層の需要拡大も相まって大量生産されるようになっており、特に町人層には障子紙として使われることが多く、この障子紙の規格が273mm×395mmの「美濃判」として広がったのです。

イギリスからの来訪者「クラウン判」と、弟分「大八つ判」

明治維新により江戸時代が終わり、外国との交流がより盛んになった明治時代には日本でも洋紙が使われ始め、日本の印刷様式に合った用紙として、美濃半紙の約8倍の大きさの「大八つ判」という紙が出回るようになります。

これはイギリスから輸入した「クラウン判」が基になった用紙で、そのサイズは1091mm×788mm
現在使われいるB1サイズ(1030mm×728mm)にかなり近いサイズとなっており、このあたりから世界標準のB判にかなり近づき始めます。

JIS? いいえJESです。B判一歩手前の日本独自規格

大正10年(1921年)、日本では日本工業規格統一調査会が設置されます。この調査会は昭和16年(1941年)までに520件の日本標準規格(旧JES)を制定します。
そして、制定された520件の中には、昭和4年に制定された紙の規格がありました。
その名も「日本標準規格92号P 紙の仕上寸法」

そう、この規格こそ現在日本で使われている紙の規格!……ではないんですよね(笑)
ものすごくそれっぽい名前をしていますが現在の規格とは若干異なります。

日本標準規格92号P 紙の仕上寸法

この規格では日本独自のA判、B判が制定されているのですが
原紙寸法(A1、B1)はA列が「630㎜×880㎜」B列が「770㎜×1090㎜」となっています。

現在使われている規格の誕生はもう少し先になります。

戦後の一新 JISの制定とB判の誕生

日本国業規格統一調査会が設置されてから25年後の昭和21年(1946年)第二次世界大戦が終戦した翌年であるこの年に、現在も日本の規格を管理している日本工業標準調査会(JISC)が経済産業省に設置されます。

この調査会は現在でも使われいる日本工業規格(JIS)を制定しており終戦間もないこの時期は、日本技術の
古い標準化制度を一新する転機となり、その一環として1951年には紙の規格が制定されました。
その名も、「JIS P 0138 紙加工仕上寸法」

JIS P 0138 紙加工仕上寸法

この規格はドイツのA判を基にしており、A0サイズ(841mm×1189mm)の面積が1㎡であったため、この面積をキリよく1.5倍にして長辺と短辺が1:√2になるようにしたもの。
B6サイズ(128mm×182)が江戸時代以降に流行していた四六判(130mm×188mm)に近くなるようになっているなど、日本人に馴染みやすいように配慮されている。

というわけで、大宝時代からおよそ13世紀の時を経て、ようやく現在日本で使われているB判が誕生したのです!

※ちなみに、JISCは1952年にISOに加入しています。

なんで1:√2にしたの?

A判の由来を解説した際に、「オストヴァルトが1:√2の比率を提案した~」ということをお教えしましたが、そもそもの話、なんで1:√2にしたのか気になりませんか?

……と言っても、その答えはいくら調べても出てこなかったのですが(笑)

ただ、個人的には、この比率は白銀比と呼ばれる人が美しいと感じる比率となっており、先ほど説明した「二等分にしても1:√2の比率が変わらない」という特徴も考慮すると、製紙工場などで紙を断裁する際に、1:√2の比率で作った紙だと長辺で二等分にするだけで美しい比率の紙を大量に製造することが出来たからなのではないかな~、と思っています。

しかし、長辺で二等分にすると同じ比率の紙が出来上がるのは果たして白銀比だけなのでしょうか?
実は、白銀比以外にも同様の性質を持つ比率があるのではないでしょうか?

そもそも白銀比って?

それぞれの比率の検証の前に、まずは白銀比についての簡単な解説をしましょう。
先の項でも触れたように白銀比というのは「1:√2」の比率のことなのですがウィキペディアで調べたところ他にも表し方があるようで、以下はその引用となります。

・1 : (1+ √2) の白銀比は、貴金属比の一つ(第2貴金属比)である。近似値は 1 : 2.414 である。
・1:√2の白銀比は、1:1.414…… で、約 5:7 である。紙の寸法などに用いられる。

※貴金属比という比率は後ほどご紹介する黄金比青銅比も含まれるカテゴリーとなりますので、皆様ここだけでも覚えておいてください。

A判とB判の共通点と違い

A判とB判の違いの前に共通点は?

A判もB判も縦横の比率は1:√2(1.4141)となっており、この比率は「白銀比」と呼ばれるアジア人が美しいと感じる比率となっています。

半分に折っても縦横の比率が変わらない。だから、A0→A1→A2とサイズが小さくなっても比率が変わらないんですね。

では、A判とB判の違いは?

実は、日本と同じB判規格を使っているのは中国と台湾だけなのです。
ちなみに、スウェーデンではD、E、F、Gなどの複数の規格を使っているとか…。

各サイズの数値の覚え方

ごろあわせ

印刷に関係する仕事に携われば自ずとサイズについては覚えていくのですが、そうで無い限りはせいぜいA4サイズが覚えれるかどうかと言うところではないでしょうか。なんと言ってもサイズの数値が中途半端!

なぜ、●●のサイズは1,500mm×1000mmです。など覚えやすい数値にしてくれなかったのか(白銀比を考慮してるので無理があるのは承知してますが)

そこでポスター印刷ソクプリでは、いつまでたってもサイズを覚えることが出来ない貴方のために、「これで完璧!印刷の規格サイズを覚える語呂合わせ」を考えました。

是非規格サイズを覚える際に役立ててください。

これで完璧!印刷の規格サイズを覚える語呂合わせ

A0~A5でつかう数値は以下の6つになります。
A列:1189,841、594、420、297、210、148
例:A1は(841mm×594mm)A2は(594mm×420mm)ですね。

B0~B5でつかう数値は以下の6つです。
B列:1456、1030、728、515、364、257、182
例:B1は(1030mm×728mm)B2は(728mm×515mm)ですね。

だからこの合計14個の数値さえ覚えてしまえば後は上記で隣り合っている数値同士をかけ合わせるだけで各規格サイズが作れます。

以下、ソクプリが考案した語呂合わせ。

A列
「いい役もらったヤヨイさん、根拠なき失恋に苦難して、太ってしまい医者に頼んで役に合わせ」
※いい役=1189 ヤヨイ=841 根拠=594 失恋=420 に苦難=297 太=210 医者=148
B列
「石ころ蹴った富男君、夏場から続く恋心は、今や寒しに困難頻発」
※石ころ=1456 富男=1030 夏場=728 恋心=515 寒し=364 に困難=257 頻発=182

いかがでしょうか・・・。無理があるのは承知の上です。だって元々の数値が難しすぎるんですもの。

あとそれぞれのサイズであくまで一例ですがよく使われる用途も紹介させていただきます。

各サイズの主な用途

サイズ 主な用途
A0サイズ 1189mm×841mm ビジネス用の広告・学会の発表用掲示・小学校などで使われる「あいうえお表」
A1サイズ 841mm×594mm 新聞紙の見開き・お店の店頭広告・飲食店に掲示してある大きめのメニュー表など
A2サイズ 594mm×420mm 新聞紙の片面・物販などで一般販売されているポスター
A3サイズ 420mm×297mm 選挙ポスター
A4サイズ 297mm×210mm コピー用紙・履歴書や契約書などの事務書類
A5サイズ 210mm×148mm 教科書・ハードカバーの本
A6サイズ 148mm×105mm 文庫本
A7サイズ 105mm×74mm ポケットメモ帳(胸ポケットに入るサイズ)
A8サイズ 74mm×52mm 大きめの付箋・ブロックメモ
B0サイズ 1456mm×1030mm ビジネス用の広告・学会の発表用掲示・駅のホーム(線路の中央)に掲示されているポスター
B1サイズ 1030mm×728mm 映画館の作品ポスター・お店の店頭広告・飲食店に掲示してある大きめのメニュー表など
B2サイズ 728mm×515mm 芸能人のカレンダー・物販などで販売しているポスター
B3サイズ 515mm×364mm 電車内の吊り広告
B4サイズ 364mm×257mm 新聞の折込チラシ・400字詰めの原稿用紙
B5サイズ 257mm×182mm 週刊誌・カタログ
B6サイズ 182mm×128mm 大きめの単行本・バイブルサイズの手帳
B7サイズ 128mm×91mm パスポート・ポケットサイズの手帳

以上、参考になりましたでしょうか。

今回は規格サイズのA判とB判についての記事でした。